僕らの相棒ゲーム
あと1日とちょっとで1か月と2週間、共にMTGを走ってきた相棒システムのカード達が変化してしまうだろう。
On Monday 6/1 there will be an update to the Banned & Restricted list impacting the Standard and Historic formats that will also address the Companion mechanic.
— Magic: The Gathering (@wizards_magic) May 26, 2020
(6/1にスタンとヒストリックに禁止出して相棒システムそのものに調整を行うよ~という事実上の死刑宣告)
相棒はデッキ構築に制限を一定かけ、サイドボードの枠1つを相棒枠へと変えることでゲーム開始時からどうやっても相手が干渉できない領域に相棒クリーチャーを待機させてゲームをすることができるメカニズムだ。
それぞれの相棒たちは制限させた構築に合わせた能力を持ち、それはさながらEDHにおける統率者のような立ち位置だ。
一見クールなこの相棒システムは実際ゲームにおいても構築の発想の元となったり、相棒に合わせて構築を試行錯誤することの楽しさを感じたり、相棒を前提としたゲーム展開のコントロールやどのタイミングで相棒を出すかの駆け引きにやり込みを見せたりなど非常にエキサイティングではあるものの、ゲームそのものの大枠での【再現性】を非常に高レベルなものにしてしまった。
【再現性】とは同一の特性が同一の手法により発現するとき、その結果の一致の近さのことである。
MTG的に言えば「ゲーム展開毎回いっしょ!飽きたわその展開!」である。
【再現性】と言えば「エルドレインの王権」期に禁止になった《むかしむかし》はこの【再現性】が非常に優秀なカードで、緑のみが序盤の展開の安定を他の追随を許さないほどに高めていたのが禁止カードの理由にもなっているのは記憶に新しいだろう。
今のスタンダードは相棒のあるなしである程度デッキが絞られて、さらに相棒の種類によってデッキを想定し、それに合わせたマリガンをキーカードにたどり着く確率が高いロンドンマリガンによって行う情報ゲームの側面が大きい。
相手の見せた相棒がヨーリオンなら「ジェスカイルーカファイアーズ」を想定し除去の少ない盤面で圧をかける手札にしたいし、オボシュを見せてきたのなら「赤単オボシュ」を想定して重めのカードはなるべく初期手札に持たないようにしたい。逆に相棒を見せてきていないのなら「荒野の再生」「ジャンドサクリファイス」を想定でき、初対面の相手とゲーム1の開始前でありながら初期手札の質で読み合いをすることになる。
その結果が「毎回同じデッキに同じカードを同じターンにプレイされてるなぁ~」と感じてしまうことになる。
じゃあ相棒クリーチャーはそんなにヤバいのかと言うとヤバいことはヤバいが功罪入り乱れたヤバさであると言いたい。
実際モダンフォーマットでは今までのコンボデッキがフェアデッキを蹂躙しては禁止、新たなコンボデッキが環境を席巻しては禁止を繰り返していたが、現在モダンのトップメタはコンボというよりはかなりフェアなアグロ寄りのルールス入り果敢ビートダウンデッキだ。
真面目なフェアデッキ(と言っても旧来のフェアよりは全然アンフェア寄りだが)が環境トップとなっていてどれに各種コンボ、コントロールが食いついていく状況はいつぶりだろうか。
相棒はそのシステムの都合上あまりコンボデッキには入れられない(パイオニアではまた別)ことからフェアデッキだけを強化しメタを回すことに成功している。(少々ルールス果敢が強すぎる感はあるが)
スタンダードでもMTGアリーナという特殊な環境のおかげではあるが「ヨーリオン赤単」や「ウモーリGO」といったこの相棒環境であるが故のセオリーを逆手に取ったデッキが生まれたりもしている。
Mythic Invi Qualifier 4-2.
— malseman (@malseman) May 16, 2020
80-YORION RED.(The Fake!) inspired by umikaze san.
Teferi Avatar, Lukka Sleeve, Yorion Companion (Trick)
Game 2 become 66 card compact normal mono-red.
Fake win / draw first lose / play first win strategy worked! pic.twitter.com/b0IquWP7Ta
(サイドボードの枚数を見せあう紙では起こりえない面白いアプローチ)
ヨーリオンは今までの「デッキは60枚になるように組まなければならない」という常識に80枚デッキで多くの結果を残してヨーリオンを出せる前提があるとはいえ打ち砕いてみせた。
低マナ域のカードパワーが他フォーマットに比べて低いスタンダードでもルールスのためにパーマネントのコストを2以下に抑えてデッキをつくりやっていけると証明された。
今まで赤単に必須と言われてきたトーブランとエンバレスの宝剣を入れなくてもオボシュを相棒に据えて赤単は駆け抜けることができている。
このように相棒は相棒というカードパワーの高さこそあるが相棒を用いたゲーム自体は楽しかった。
しかしゲーム進行の再現性の高さや強い相棒のみを中心としてメタが回ってるような回ってないようなという感覚は確かに不快でもあった。
予告されている相棒メカニズムのテコ入れは発表以来ちょくちょく考えてはいるが、どれもしっくりこないし単なる弱体でもルールそのものにテコ入れをする代替案でも楽しいゲームを相棒と共に作り出せるとは感じないのだ。
僕は完ぺきな相棒に関する案を出すことはどうしてもできず、ゲームデザイナーにはなれないなと思ってしまうばかりである。
カードデザイナーであるWotCの開発班の方々には是非相棒のエキサイティングな面を損なわずに、抜きんでた強さを是正できる調整を期待したい。