メッサーラがメッサでガンダムVSシリーズの略称の話

劇場版機動戦士閃光のハサウェイが公開されてしばらくが経った。

おおむね好評らしく興行収入が10億円を突破したらしい。すごいことだ。

 

そんな中あるバズったツイートが流れてきた。どうやらガンダム勢(ガンダムVSシリーズを主にプレイしていて映像作品は見てない)には『メッサーラ』も『メッサー』も一緒くたに「メッサ」だからややこしくてかなわん。というツイートだ。

このツイートに強烈な違和感を覚えた。

 

10年近くVSシリーズをプレイしていろんなコミュニティを覗いたり参加したりしたがメッサーラ』を「メッサ」と略すことはあっても『メッサー』を「メッサ」と略すことは見たことがないなぁ…というものである。

 

これがどうしてなのか、前提としてガンダムVSシリーズというかゲーセンのアーケードゲーム全般のネット上における情報発信や交流は「したらば掲示板」という2ちゃんねるに似たネット掲示板で行われてきた。

そこでは短文で意図を伝えることが求められ(Twitterの140字制限よりは緩いが長々しい文はそもそも文章力がないと読んですらもらえない)正式名称の長い機体や武装は略して呼ばれることがほとんどであった。

例として「エクストリームバーサスマキシブーストプレミアムドッグファイト2015の決勝戦ストライクフリーダムガンダムガンダムサンドロック改ペア対バンシィ・ノルンドレッドノートガンダムペアの対戦となった」を略して書くと「EXVSMBPDF2015の決勝戦ストフリサンド対ドレノルンの対戦となった」になる。

この通り前提が共有されているなら略語、略称を使う方が圧倒的にわかりやすい。

 

定型やAAといった前提が共有されている人ならパッと見るだけで意図が伝わる文字によるスラングというのは掲示板文化の特徴であり、それがガンダムでは略語、略称になっているというわけだ。

したらば掲示板による情報共有や交流といったものは現在YouTubeでの動画配信やTwitter、discordでの交流に切り替わっていてしたらば掲示板自体はほぼ廃墟と化しているが略語、略称の文化自体は生き残っており、配信者が略語を使うことで視聴者も使うようになる構図が出来上がっている。

 

その略語、略称について個人的な感覚だが、ガンダムVSシリーズの略語、略称には大きく分けて3つの分類があるように思える。

 

1つめは長いから略すというもので『ストライクフリーダムガンダム』は「ストフリ」呼びになり『Gセルフパーフェクトパック』は「Pセルフ」になる。

これは単純で長い正式名称を書くのはめんどくさいからであり、通じるなら略称で十分じゃないかと至極まっとうなものであり、意味がある程度わかるならさらに短くもなることもある(「Pセルフ」の更なる略で「Pセ」なんてものも見たことがある)。

 

2つめは入力しやすくするために略すというもので『マスターガンダム』を「升」に、『Hi-νガンダム』を「胚乳」といったようにする。

これらは略称として既に存在する呼び方をさらに入力しやすく変形させたものでほとんどは声を出して読んだときの音重視なものである。

この音重視な更なる略は数があまり多くない。それは、ただでさえ前提となる名前を知っていなければならないことに加えてその単語が更に略されたものであることが瞬時にわからなければそもそも略した意味がないからであろう。

ガンダムAGE-3』がVSシリーズに参戦したころの話にそのような更なる略しが定着しなかった面白いパターンがある。『ガンダムAGE-3』はノーマル、オービタル、フォートレスの3つの形態を状況に応じて換装しながら戦う機体として実装され、したらば掲示板のスレッドではどの形態がどのように動かすことがいいのかがちらほらと書き込まれていた。

そんな中、機体の略称が欲しいから考えてきたというレスが書き込まれる。ノーマルはそのままにオービタルは「帯」、そしてフォートレスは「写」にして共有しようというものだった。

オービタルが「帯」なのはある程度理解ができるがどうしてフォートレスが「写」なのか?それはフォートレス→photoレス→写真→「写」呼び…となんともわかりにくいものであり、(書き込んだ人が幼稚なレスを繰り返していたこともあって)全く定着しなかった。

 

3つめは似たような性質のものを総じて一つの言葉で表す というもので「ゲロビ」「アシスト」「ブーメラン」「カウンター」などが当てはまる。ゲーム的には同じ性質なのにいちいち個々に武装名を書いていてはめんどくさい、似たようなものは一つの言葉でまとめてしまえとこうなったのだろう。

これは略すこととはちょっと違うがどのキャラのどのコマンドがどのような性質かが直観的に理解しやすくなることから略しの変化形として自分は3つめの分類に入れている。

 

で、本題の『メッサーラ』と『メッサー』が同じ「メッサ」であるややこしさに関してだが、VSシリーズを遊ぶガンダム勢にとって『メッサー』は基本「Ξガンダムの格闘CS」か「Ξのアシスト」呼びでわざわざ略すまでもないというのが正直なところだ。

こう書くと完全に出オチでこれ以上書くことがなくなってしまうが確かにそうなのである。『メッサーラ』は長い間プレイアブル機体として存在し「メッサ」と略され、それが広がり略称で呼ばれることもガンダム勢では一般的になった。しかし『メッサー』はそもそもプレイアブル機体ではなく知名度も低く一般的なメディア露出もほとんどない「オタクな機体」だった。そのうえ登場したのはΞガンダムのアシスト武装としてであったので機体名で呼ばれるよりも武装の性質である「アシスト」やコマンドである「格闘チャージ」が先に呼ばれるようになった

 

彼にとって文字の上では区別がつかない『メッサーラ』も『メッサー』も「メッサ」で同じ問題は愛がないからとか粗暴だからとかガンダム勢は猿だからといった脳の詰まってないウジ虫レベルのレッテルのためではない。略して呼ぶほどに『メッサー』を機体名で呼ぶ価値のあるMSだと考えられるレベルまで映画が引き上げてくれたのだ。

みんなもそんな閃光のハサウェイの映画、見に行こうな!